令和三年 九州場所 中日八日目
中日八日目、日曜日。
場所の折り返しの放送席は、ついに・・・!
ザワザワザワザワ
遠藤「今日の解説誰だろう・・・。」
遠藤「チラ。」
遠藤「こわッ!ボスだ・・・。」
ついに見参。
稀代の大横綱第69代白鵬翔、解説席にピットイン。
しかし予想に反して語り口は物腰柔らかく、穏やかで、物静か。
放送終了時には、三瓶さんも戸惑うほどのお辞儀で締めた、大横綱。
数々の大記録を打ち立てた輝かしい経歴は、大相撲ファンならずとも多くの人々が知るところですが、今さらながらその裏にあった地道な膨大な質量兼ね備えた努力の積み重ねには、敬服するばかりです。
長い土俵人生を振り返りながらの2時間でしたが、幕下時代の取り組みを昨日の事のように事細やかに語る様子に、記憶力の良さもうかがえます。
また驚かされたのは、場所中に幕内の放送録画を毎日観ていたということ。
ということは・・・・・・。
やはり、放送席のやり取りも、全部聞いていたということか・・・。
【向こう】
三瓶「親方・・・。」
三瓶「今日もし、向こう正面に。」
三瓶「舞の海さんがいたら、どうしますか?」
白鵬「・・・・・・。」
白鵬「・・・シバく。」
三瓶「ですよね~。」
ことあることに、「白鵬は衰えた」と繰り返していた舞の海。
白鵬に恐れをなして今日は逃げたか。
そう言えば昨日鶴竜の時には向こう正面にいましたね。
やっぱり優しい方に逃げ込んだな。
でもそんな白鵬も、32でガクンと来た、と言っていました。
32ですか。
それは結構早いですね。
うちのオヤジは「65でガクンと来るぞ!」と繰り返していましたが、一流アスリートとそこら辺のじじぃのガクンとは全く別物でしょうから何の比較にもなりません。
しかし白鵬にせよ鶴竜にせよ、モンゴルの元横綱の親方衆は頭がいいですな。
共に洞察力に優れて、冷静。
そして研究心、探求心、向上心が高く、目標に向かって努力、工夫を惜しまない。
どちらもただ漫然と同じような稽古を繰り返すことはしなかったことでしょう。
常に問題意識をもって考えながら、やるべきことを自分で探す。
稽古といえば身体を動かすことばかりを想像しがちですが、同じくらい頭も使わにゃ上にはいけんという事のようです。
そんな同じモンゴルの憧れの先輩の背中を追う、三浦駿さん。
無念にも髷を掴んだとみなされ、反則負け。
反対にこれで勝ちを拾うこととなった大関貴景勝は、運よく勝ち越し8勝目。
けれどこの一番の逸ノ城に投げられる貴景勝の姿は、まるで漫画の一コマのよう。
本当にくの字になって飛んでいる人を初めて見ました。
正直言ってこれで反則を取られた、逸ノ城はとても気の毒ですが、この一番での白鵬のコメントが怖かった。
「私ならあと30秒待つ」
怖いですね~、恐ろしいですね~(淀川長治)
あれでも十分、貴景勝を苦しめたと思うのですが、白鵬だったらあれからさらに30秒も苦しめるんですね~。
引退して柔和になったと言えども、そこは勝ちに誰よりもこだわった勝負師。
勝つためには相手をいかに苦しめるかに徹底する姿勢が窺えます。
勝負にかける厳しさを誰よりも知っていた白鵬だからこそ、一つの勝ち星を手に入れるために積み重ねる努力の大切さも誰よりも知っていることと思います。
その小さな努力の大事さをこれからに続いて行く弟子たちに、教え伝えて大相撲をさらに豊かなものへと導いていってほしいと願います。
そして今度放送席に来た時には、舞の海をどうぞ存分にシバき倒してください。