令和三年 名古屋場所 十二日目
相撲でも合口というものがあるように人付き合いにも、合う合わないという相性があるものです。
【良薬】
沢田石「親方、親方~。」
沢田石「さっき蚊に刺されたみたいで~。」
沢田石「すごく痒くって、痒くって~。」
沢田石「親方、どおしたらいいですか~。」
豪栄道「・・・・・・。」
豪栄道「・・・キンカンでもつけとけ。」
沢田石「えぇ~、キンカンって骨折のお薬じゃないんですか~。」
現役時代に骨折してキンカン塗ってたという逸話を持つ豪栄道。
そうそう、キンカンって虫刺され以外にも打ち身ねんざにもよく聞くお薬なのよね。
・・・って、お~~い豪栄道!キンカン過信しすぎだろう!
今は指導者になった元豪栄道こと武隈親方。
稽古場にはたくさんのキンカンを常備していることでしょう。
しかしやっぱり、この二人はどうもかみ合わない。
口数の少ない豪栄道に、いつまでたっても頼りない沢田石。
凸凹コンビの化学反応を狙ったキャスティングなのかもしれませんが、ときどき妙なところで突っ込んだ質問を投げかけてくる様子には、あの豪栄道優勝の魔のインタビューが脳裏によみがえり緊張が走ります。
今日も終始、不安定な進行でついには天海空(あくあ)を(あくま)なんて言っちゃう始末。
豪栄道の無言の圧力が沢田石に重くのしかかっていたのでしょう。
これから先も長い付き合いとなる豪栄道との解説席。
沢田石の研鑽の日々はまだまだ続きます。
終盤戦に入ると勝ち越しをかける土俵も多くなってきます。
8勝目に挑む土俵上。
雑念は消え集中は極限へと達します。
【ここまで出てる】
宇良「・・・・・・。」
宇良「この人の名前、何やったかな・・・。」
宇良「あ~、出てきそうで出てこんなぁ・・・。」
ザワザワ
「え~っと・・・。」
「ほら、外人さんの・・・・・。」
「・・・思い出した。」
「阿夢露さんや・・・!」
阿夢露さんに土俵際の逆転の突き落としで幕内復活の勝ち越し。
居反りで鳴らした上体の柔らかさとバネがこの一番の生命線となりました。
これで今場所ご機嫌斜めな北の富士さんの溜飲も少しは下がったのではないでしょうか。
優勝の行方は依然として白鵬、照ノ富士の二人の間で膠着状態のまま。
両者の集中力は日に日に高まっているように見受けられます。
このまま千秋楽まで緊迫を保っていくことになるのでしょうか。
綱をめぐる緊張感はいよいよクライマックスへ突入していきます。