令和四年 五月場所 千秋楽
天皇賜杯をめぐる長い戦いの日々もいよいよ、今日で幕を下ろします。
【ピカピカ】
ワイワイ
ん?!
ちょっと・・・。
すごい・・・!
僕が映ってる・・・!
天皇賜杯はいつもピッカピッカ。
今日は時折通路奥で内閣総理大臣杯をゴシゴシと磨く様子が映っていました。
仕事熱心なことだなぁと感心して見ていましたが、なんてこはない。
久しぶりに閣僚がやって来たんですね。
さすがに天皇賜杯は毎場所手入れはしてたんでしょうけど、総理大臣杯までは気が回らなかったのでしょう。
ここ2~3年のコロナ下では身内だけの気軽な授与式でしたから、本来は銀色の輝くトロフィーも気が付けば手型や指紋だらけのべたべたになっていたんじゃないでしょうか。
身内だけなら誰も何も気にしやしなかったのに、今日はその贈り主が久しぶりのお出ましに大慌てで磨き上げてったでわけですね。
そりゃぁ、閣僚来るのにドロドロべたべたはヤバいですよね(笑)
で、慌てて拭き上げて手油はちゃんと取れましたか?
そんな天皇賜杯とベタドロの総理大臣杯をめぐる15日間の攻防も、終わってみれば収まるところに納まって照ノ富士の7回目の優勝で幕となりました。
苦しい土俵が続いた前半戦ではどうなることかと思って見ていましたが、緊張感を保ち続けて復調まで持ってくる15日間はさすが横綱。
常に厳しいところに自分を置き続けて、土俵に立ち続ける姿は立派の一言。
結果が問われる立場に立ち続ける者の覚悟と重責を改めて感じました。
でも今日のインタビューは同部屋の錦富士の十両優勝の喜びも重なって、珍しく顔をほころばせて喜ぶ姿が印象的でした。
横綱おめでとう、立派な15日間でした。
優勝を逃した隆の勝も今場所はいい経験となったことでしょう。
今までどこか詰めが甘かったり、雑だったりして幼さも感じることも多々あっただけに、今場所の経験が隆の勝を大きく脱皮させることになるのではと今後の活躍が大いに期待されます。
佐田の海もまた、真面目にコツコツと続けていればいつかチャンスが巡ってくることを体現してくれました。
力士の現役人生も長くなった現代では35歳はまだまだやれます。
怪我に気を付けながら鍛錬を重ねることの大切さを、多くの力士に示してくれた素晴らしい活躍でした。
そんな活躍がまぶしい優勝争いの陰で、激しいもう一つの戦いが繰り広げられていました。
【誘い】
正代「仲間に入れよ。」
貴景勝「嫌だ!」
正代「一緒に歴史を塗り替えよう!」
貴景勝「嫌だ!」
正代「みんなでカド番トリオになろうよぉ。」
貴景勝「ぜったいに…。」
貴景勝「嫌だ~~~!!」
執拗なカド番トリオへの誘いを渾身の蹴りで倒した…わけではないですが、ありったけの力を込めて放った突き落としで、悪の誘いを断ちきることができました。
なんて言うんでしょうか…。
優勝をめぐる戦いはもちろん胸躍り感動するものがありますが、この保身をかける運命の一戦はまた違った意味で胸に迫るものがありました。
ある意味、優勝争いよりも重い取り組みとなった千秋楽の結び前の一番。
勝敗の判定は慎重の上に慎重を重ねていきます。
【プライド】
ザワザワ
ザワザワ
伊之助「ちょっと。」
伊之助「アンタまで私のさばきに文句つけるのかい?」
藤島「確認ですよ、確認。」
ほんと俵つたいのギリッギリだったんですね。
しかしそのギリギリが運命を分けて、戦後初の事態を回避することができました。
勝ち越した貴景勝も8勝7敗と、けっして大関の務めを果たしたと言えるような結果ではありませんでしたが、来場所カド番を免れた面は大きかったことでしょう。
大関3人いて誰も優勝に絡むことができなかったことはおろか、二人は負け越し、一人はようやく勝ち越しと惨憺たる有様の大関陣。
それぞれ人には言えない理由がいろいろあるとは思いますが、それは他の力士も同じこと。
今こそ心を入れ替えてやりなおすチャンスです。
豪風が言っていたように「心は1秒で変わる」の言葉を胸に、「3年先の稽古」を今日から積んでいこうではないか。
今場所の土俵が教えてくれたことは。
横綱以下は横一列である、ということ。
番付が形骸化してしまったこと露呈した場所となりましたが、この混沌とした無秩序の幕内で新たな秩序を作り上げるのは誰なのか。
全ての力士にチャンスありです。